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2024年12月 | 派遣会社 厳選3社
出向社員と派遣社員の違いとは?
まずは、出向社員と派遣社員の違いについて説明し、その後で出向の形態別の特徴や在籍期間の違いを紹介します。
出向社員と派遣社員は具体的にどのような点で異なるのでしょうか。
出向とは
出向は、「職業能力の開発や経営」「技術指導」「人事交流」といったことを目的にして行われるのが一般的です。
つまり、純粋な労働力の増強というよりも企業経営を中長期的な観点で考え、将来的な投資といった側面も含まれています。
出向者には、自社の事業について知識や経験をより深めてもらうために、基本的には同一の企業グループ内で行われるケースが多い傾向です。
企業グループ外企業へ出向するケースも、まったくないわけではありませんが、人材派遣業として行われることはありません。
つまり、出向では必ず出向者の労務管理(給与、社会保険料、労災保険などの支払い)は、出向先が負担します。
出向者の心情に配慮して出向元の企業が給与や社会保障費を肩代わりするケースもありますが、その場合でも支払った金額の全部または一部を出向先の企業に請求することが多いです。
そのため、出向者が労働契約を結ぶ相手先も、出向先の企業になります。
指揮命令権も出向先企業になるので、出向先の上司の指示には従わなければいけません。
派遣とは
派遣は、労働者派遣と呼ばれており、派遣元企業と派遣先企業が労働者派遣契約を結んで、雇用契約を結んだ労働者を企業に派遣している雇用形態です。
つまり、派遣先企業と労働者との間には労働契約は存在しません。
あくまでも派遣元と労働契約を結んだうえで、派遣先に出向いて仕事をすることになります。
ただし、指揮命令権は派遣先の企業にある契約です。
そのため、労働契約は派遣元でありながら、指揮命令権は派遣先という関係になるのも特徴の一つです。
また、給与や社会保険料の負担先は労働契約を結んでいる派遣会社である点も、出向とは異なります。
出向と派遣は、労働契約の締結先は異なりますが、指揮命令権はいずれも派遣先にあるという点では共通していると覚えておくとよいでしょう。
なお、出向や派遣とよく比較される契約形態に「請負」がありますが、請負契約は仕事の発注者と労働者の契約で、仕事の成果に対して報酬が支払われる契約です(業務に対して報酬が支払われる契約は業務委託)。
請負は出向や派遣と違い、指揮命令権は発注者ではなく受託者にあります。
出向社員の労働契約は2タイプある?
出向社員の労働契約は、出向先と結びますが、主に「在籍出向」と「転籍出向」の2つのタイプに分けられます。
そこで、この段落ではそれぞれの出向形態の特徴について紹介します。
在籍出向とは
在籍出向の特徴は、労働契約を出向元と出向先の両方で交わすことです。
それによって、出向元に籍を残したうえで、指揮命令権は出向先が確保している状態になります。
つまり、必要に応じていつでも出向元の企業の戻れる契約になっているのが特徴です。
イメージとしては、グループ企業や子会社への人事異動という感覚に近い出向形態だといえます。
労働契約を出向元と出向先の双方で交わす関係上、二重契約になるので給与や社会保険料の支払いなどをどちらが負担するかはケースバイケースです。
通常は、出向元と出向先の双方で話し合って決められるので、在籍出向で働く場合はしっかり確認しておくことが重要だといえます。
在籍出向は、出向契約のなかで期間が明確に定められていて、将来的に出向元の会社に戻ることを前提としているのが一般的です。
また、籍自体は出向元の会社に残っているので、出向を命令する明確な根拠があれば、労働者の同意なく命ずることもできます。
ただし、労働条件などは具体的に定められていないと、勝手に命じることはできません。
いずれにしても、在籍出向を命じられた場合は、労働条件をよく確認することが大切だといえます。
転籍出向とは
転籍出向は、出向元と出向先の間で転籍契約が結ばれ、出向元との雇用契約を終了して、出向先の企業とのみ雇用契約を結ぶ出向形態です。
つまり、出向元との雇用契約は消滅し、出向先の労働者として働く性質が濃い契約だといえます。
雇用保険や社会保険なども新たに出向先の会社で加入することになるのが特徴です。
出向元に籍を残したまま働く在籍出向と異なり、出向先で一定期間働いたとしても元の職場へ復帰できるとは限らず、実質上の転職となるケースが多いです。
転籍出向は、在籍出向に比べて労働者の負担が大きい契約なので必ず同意が必要になり、会社側が一方的に命令することはできません。
労働条件が具体的に提示されても、拒否することも可能だという点は覚えておきましょう。
在籍出向と派遣の見極め方
出向の形態のなかでも、特に派遣と見極めが難しいのが在籍出向です。
労働者派遣と在籍型出向との差
在籍出向と派遣の違いは、厚生労働省の資料でも解説がありますが、在籍出向と派遣の違いを簡単に理解するためには、「在籍出向に当てはまるが派遣社員に当てはまらないこと」を確認しておくとスムーズです。
たとえば、「出向先で社会保険や労働保険に入っている」「出向先が給与の一部または全部の支払いをしている」などが該当します。
また、「出向先が独自に出向労働者の労働条件を変更することがある」「出向先の就業規則が適用される」といった事項も、在籍出向ならではの特徴です。
派遣では、基本的に賃金や社会保険といった「労働者が働いて得られる権利」は派遣元に責任があると覚えておくとよいでしょう。
それに対して、在籍出向と派遣の間で共通していることは「指揮命令権が出向先にあること」です。
在籍出向と派遣の見極め方は少し難しく、求人広告に出向と記載してあるもののなかには、実質的に関連会社への在籍出向になるケースもあるので注意しましょう。
【図:派遣と在籍出向の雇用関係・指揮命令権の違い】
(参考)
出向社員と派遣社員の在籍期限の違い
出向社員と派遣社員では、在籍期間の違いもあります。
詳細について理解して、どういった働き方が自分に適しているかを考えてみましょう。
出向社員の在籍期限
結論からいうと、出向社員の在籍期間には制限がありません。
そもそも、出向の目的としては技術習得などの人材育成の側面もあるため、1年以上の長期となるケースが多いです。
契約期間中に家庭の事情などで退職したい場合などでも、その旨を伝えにくい点はデメリットだといえます。
一方、期間を延長する場合は双方が合意していればよく、なかには10年以上の長期間にわたって出向しているケースも珍しくありません。
ただし、業務上の必要がない場合や不当に長い期間の出向を命じられていて復帰の予定がない場合は、出向命令が権利の乱用に当たる可能性があります。
権利の乱用に該当した場合は、出向命令を無効にできるケースもある点は押さえておきましょう。
さらに、出向期間があまりにも長い場合には、出向形態が在籍出向から転籍出向に変わっている可能性も考えられます。
出向期間が不自然なほど長いと感じる場合には、契約内容を一度確認したほうが無難です。
派遣社員の在籍期限
結論からいうと、派遣社員の場合は在籍期間が契約条件によって最初から決まっています。
定められた契約期間を更新していくことは可能です。
しかし、働く人のキャリアアップの機会を奪わないように、最長で3年の上限が法律で決まっています(いわゆる3年ルール)。
3年を超えて同じ職場で働く場合には、派遣先の企業が直接雇用しなければいけません。
契約期間は、派遣先の企業によって1カ月程度の短期契約から半年程度の長期契約までさまざまです。
ただし、実際には半年から1年半ほどで仕事が変わるケースが多いです。
出向に比べて比較的短期間での契約を更新していくため、家庭の事情などのトラブルにも対応しやすい点はメリットだといえます。
自分のライフスタイルに合わせて働きたいという人に向いている働き方です。
二重派遣に注意!出向との違いは?
「3.在籍出向と派遣の見極め方」の項目で、派遣と在籍出向の違いを説明しましたが、まれに、派遣社員が派遣先の企業(派遣業の許可を得ていない会社)から、その子会社や第三者企業などに出向してきている派遣パターンがあります。
これは「二重派遣」と呼ばれており、職業安定法という法律で禁止されています。
つまり、派遣社員が派遣先から別の会社に出向するのは違法ということです。
派遣社員は、雇用契約を結んだ派遣元と派遣先が、業務内容を取り決めています。
しかし、二重派遣が行われると、派遣元と出向先で契約関係は無くなります。
そのため、もし、出向先で何かのトラブルが発生してしまった場合、本来、派遣法や労働基準法で守られるはずの派遣労働者を、法律で守ることができなくなるのです。
もちろん、派遣社員が出向先でケガをしても、そこに労働契約がないため、労災保険はおりません。
ほかにも、二重派遣にはさまざまなリスクがあるため、注意しましょう。
以下の記事で二重派遣について詳しく解説していますので、気になる人は参考にしてください。
契約形態をチェックしておこう!
出向と派遣は、似ている部分もありますが異なる部分もあります。
基本的に労働契約を結ぶ相手は、出向社員は出向先であるのに対して、派遣社員は派遣元の会社です。
それに伴って、給与や社会保険料の支払い先も変わってきます。
また、契約期間においても派遣社員のほうが融通が利く部分が多く、ライフスタイルに合わせて働きやすいのが特徴です。
契約形態をチェックして自分に合った雇用形態で働きましょう。