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2025年1月 | 派遣会社 厳選3社
「派遣」と「請負」の労働形態
派遣も請負も、「外部の会社から依頼された仕事を行って対価を得る」という点は共通です。
そのため、どちらの労働形態も同じようなものと考えてしまいがちですが、実際には大きな違いがあります。
まずは、派遣と請負がそれぞれどのような働き方なのかという基本的な意味について説明します。
派遣と請負の依頼主、雇用主、指揮権、お金の流れなどの違いに注目すると分かりやすいです。
派遣とは
派遣とは、「派遣会社」と「派遣労働者」、そして仕事の依頼主である「派遣先企業」の3つによって成り立つ労働形態です。
派遣の仕事は、派遣先企業と派遣会社が「労働者派遣契約」を結ぶことによって成立します。仕事を受けた派遣会社は、派遣の仕事を希望して自社に登録している人を、派遣労働者として派遣先企業に向かわせます。
このとき、派遣労働者に対して業務上の指揮命令権をもつのは派遣先企業です。
そのため、派遣労働者は派遣先企業の指示に従って仕事を行うことになります。
一方、派遣会社と派遣労働者は雇用契約を結んでいるので、派遣労働者にとっての雇用主は派遣会社です。
実際に仕事を行う派遣労働者の立場からみると、雇用主と勤め先が異なっていることになります。
この点が、派遣という労働形態の大きな特徴です。
請負とは
請負とは、「請負会社」と「請負労働者」、そして仕事の依頼主である「発注者」の3つによって成り立つ労働形態です。
請負の仕事は、発注者と請負会社が「請負契約」を結ぶことによって成立します。
仕事を受けた請負会社は、自社に所属している人に請負労働者として働いてもらうことによって仕事を行います。
このとき、請負労働者に対して業務上の指揮命令権をもつのは請負会社です。
そのため、請負労働者は自分の会社の上司などから指示を受けて仕事を行うことになります。
請負会社と請負労働者は雇用契約を結んでいるので、請負労働者にとっての雇用主は請負会社です。
実際に仕事を行う請負労働者の立場からみると、雇用主と勤め先が同じということになります。
請負労働者が発注者から直接指示を受けて仕事をすることはないので、派遣と比べると理解しやすい労働形態と言えるかもしれません。
請負は工事現場やソフト開発関係の業界でよくみられる形態です。
〇〇請負会社などのワードを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか?
働く場所は請負会社内のスペースであったり、発注先の企業であったり、自由であったりと様々です。
請負の働き方は2種類ある
請負は大きく分けて2種類の働き方があります。
請負会社の従業員として働く方法と個人で仕事を請け負う方法です。
安定を求めるのならば請負会社、自由を重視するならば個人が向いています。
請負会社の正社員ならば正社員待遇
会社の業務形態自体は請負であったとしても、その会社に正社員として雇用されている場合の待遇は普通の会社の正社員と何ら変わりはありません。
指揮権は上司にあり、お給料は月給制で社会保険もあります。
自由度はあまり高くありませんが、安定した働き方ができるでしょう。
もちろん、請負会社への派遣、契約社員やパートと言った働き方もあります。
この場合も他の企業への派遣や契約社員、パートとそれほど働き方は変わりません。
個人請負ならば自由度はかなり高いけれど立場は弱め
請負の働き方でも最も自由度の高い働き方の1つは請負会社に属さない個人請負という形です。
個人事業主、フリーランスなどと呼ぶ場合もあります。
請負会社を介さず(紹介会社を利用する場合はある)、個人で企業から仕事を受注し、成果物を納品します。
納期までに指定されたものを納品さえすればいいので働き方はかなり自由です。
上司は存在せず、仕事の種類によってはどこで仕事をしてもいつ仕事をしてもかまいません(契約や仕事内容によっては指定がある場合もあります)。
ただし、社会保険などは個人で加入する必要があります。
失業保険や有給休暇などもありません。
報酬は成果物で決まるので仕事を受注できなければ収入ゼロもあり得ます。
得意なことを生かせますが、実力がないと厳しい世界です。
個人は企業に比べて立場が弱く、以下で紹介する偽装請負のリスクも抱えています。
個人請負を目指すのならば、ある程度のキャリアを積んでから独立するのをおすすめです。
「派遣」と「請負」の主な違い
派遣と請負は似ている部分も多いため、何が違うのかイメージしづらいという人もいるかもしれません。
ここからは、両者の違いに注目しながら、もう少し具体的に説明していきます。
目的の違い
派遣と請負とでは、そもそもの目的に違いがあります。
派遣の目的は、労働者派遣契約に基づいて「労働力を提供すること」です。
したがって、仕事に対する対価は労働時間に応じて決まります。
例えば、ある労働者が8時間働いたのなら、「時給×8時間」に相当する対価が支払われるということです。
このとき、派遣労働者の仕事は労働基準法の適用対象になっています。
労働基準法には時間外労働に関するルールが規定されているので、定められた時間を超えて働いた場合には残業代も支給されます。
一方、請負の目的は、請負契約に基づいて「成果物を提供すること」です。
したがって、約束された成果が達成された時点で、事前に取り決めてあった対価が支払われます。例えば、「成果物Aを5万円とする」という取り決めをしていた場合には、成果物Aが完成した時点で5万円が支払われます。
成果物を完成させるために誰が何時間働いたかは関係がなく、完成しない限り対価は発生しません。
ただし、請負会社は従業員に対しては時給や月給などの固定給を払う場合が多いです。
指揮命令権の違い
指揮命令権を誰がもっているかも、派遣と請負で違う点です。
派遣の場合は、派遣労働者に対する指揮命令権は派遣先企業がもっています。
派遣労働者の雇用主は派遣会社なので、派遣労働者は雇用主ではない企業からの指示を受けて仕事を行うことになります。
ところが、労働者への報酬を支払うのは雇用主の役割です。
そのため、派遣労働者にとっては、仕事の指示を仰ぐ相手と、給与を支払ってくれる相手が異なります。
請負の場合は、請負労働者に対する指揮命令権は請負会社がもっています。
これは、請負契約に基づいて、成果物を完成させる責任を請負会社が負っているためです。
また、報酬を支払うのも雇用主である請負会社となるので、シンプルな労働形態と言えるでしょう。
契約期間の違い
派遣と請負では、契約期間に関する考え方にも違いがあります。
派遣の場合は、その目的が労働力の提供であることから、契約期間に関する取り決めが数カ月単位で明確に行われます。
実際に仕事をして期限が近づいてきたら、契約を更新するか終了とするかを決定しなければなりません。
更新することになった場合は、次の契約期間を明確に取り決めます。
場合によっては、これまで派遣労働者だった人を派遣先企業が直接雇用するケースもあります。
派遣労働者には、契約期間が終了したあとの働き方に複数の選択肢があるのです。
一方、請負の場合は成果物を完成させることが目的なので、期間によって終了するという考え方がありません。
その代わり、成果物をいつまでに完成させたいかという期限が「納期」として設定されます。
請負労働者は、成果物を納期までに完成させるためのプロジェクトの一員になるような働き方だと言えるでしょう。
派遣と請負のメリット・デメリット
派遣と請負のメリットとデメリットを分かりやすくまとめました。
働き方に迷った時の参考にしてみてください。
派遣のメリット
・給料は時給で安定している
・福利厚生の充実
・社会保険に加入できる
派遣のデメリット
・雇用期間が決まっている。更新されない場合もある。
・昇給しにくい
・3年以上同じ職場に務められない(例外あり)
請負のメリット
・業務の範囲が明確(雑用などに遮られない)
・働き方の自由度が高い
・期間の制約がない。3年以上働くことも可能。
・能力によって収入を増やせる
請負のデメリット
・偽装請負のリスク(下の章で説明)
・報酬は成果物を納品しないと発生しない(請負会社の従業員の場合は固定給も多い)
・仕事量が安定しない場合もある
・個人事業主の場合、社会保険に個人で加入する必要がある。
「派遣」と「請負」の違いを判断する基準
派遣と請負は、その違いを理解したうえで仕事にあたることが大切です。
労働者派遣・請負を適正に 行うためのガイド
しかし、何について責任を負う契約なのかや、指揮命令権が誰にあるのかといったことを関係者がよく理解できていないこともあるかもしれません。
例えば、請負契約であるにもかかわらず、本来であれば指揮命令権をもたない発注者が請負労働者に対して業務上の指示を出してしまったり、請負労働者もその指示に従ってしまったりといったことが起こるかもしれないのです。
このような状況は、労働者を保護する観点からもよいこととは言えません。
そこで、厚生労働省では派遣と請負の違いを区別するための基準を設けています。
この基準によれば、派遣か請負かの区別は「派遣契約を結んでいれば派遣」、「請負契約を結んでいれば請負」というように契約形式で判断するのではなく、「仕事の実態」で判断することとされています。
例えば、請負契約を結んでいたとしても、発注者が請負労働者に対して業務上の指揮命令を行なっている実態が認められれば派遣であると判断されるのです。
詳しくはこちらに記してあります。
厚生労働省
「派遣」と「請負」の違いでよく起こる問題
契約形式が請負契約でありながら、仕事の実態が派遣契約のようになっている状態は「偽装請負」といわれる違法行為にあたります。
偽装請負は実際に発生することの多い問題として知られており、労働者に待遇や安全の面で不利益を与えるものです。
残業代不払い
待遇面では、労働者に対して支払われるべき残業代が支給されないという問題が起こり得ます。
これは、請負契約の対価は労働時間に関係なく成果物に対して支払われることから、そもそも残業代という概念がないためです。
仕事の実態が派遣だったとしても、請負契約を装ってしまえば正当な残業代を支払わなくて済むというわけです。
労災の責任逃れ
ほかにも、労災などの問題が発生した場合の責任逃れが起こり得ます。
発注者が業務上の指揮命令を行った結果として労災が発生しても、請負契約であることを理由に発注者が責任を取ろうとしないことが考えられるのです。
これでは、労働者の安全を確保することが難しくなってしまいます。
しかし、実際に働く職場がこのような偽装状態であったとしても、派遣と請負の違いについての知識がなければ問題に気づくことは難しいでしょう。
労働者の立場として違法行為に巻き込まれないようにするためにも、両者の違いをよく理解しておくことが大切です。
請負を隠した求人に騙されないために
求人の中には最初から「請負」募集と明確に表現していない物も少なくありません。
「雇用・請負」などと曖昧な書き方をしている場合もあります。
面接をしていざ、契約を結ぶ段階になって請負だとしてくる企業は後を絶ちません。
請負という働き方自体は何ら問題ありませんが、直接雇用と見せかけて請負を強いてくるような企業で働くと理不尽な目に合いやすいです。
派遣サーチの求人は派遣や直接雇用と見せかけた請負は一切ないので安心して仕事が探せますよ。
派遣で仕事を探している時に目につく「受託業務(請負)」とは
派遣で仕事を探していると「受託業務(請負)」の募集を目にする機会はないでしょうか?
派遣会社の中には派遣先の紹介でだけはなく、「受託業務(請負)」の仕事を募集しているところもあります。
テンプスタッフ、リクルートスタッフィング、ランスタッド、パソナの人材派遣などが募集中です。
一般的な派遣の働き方との違いを見ていきましょう。
派遣会社が請負会社の顔を持つ
派遣会社の「受託業務(請負)」は簡単に言ってしまえば派遣会社(グループ企業の場合もある)が「請負会社」としての役割をするというものです。
企業からソフト開発などの業務を受託し、派遣会社が直接従業員に指揮をします。
「受託業務(請負)」で契約した場合、派遣会社と雇用関係だけでなく指揮命令関係も発生するのです。
派遣会社の受託業務(請負)の職場環境
派遣会社の受託業務(請負)で働く場合、職場は同じ派遣社員の従業員のみです。
普通の派遣と違って職場に他の派遣会社のスタッフや正社員、発注者の社員などはいません。
一緒に働くメンバーは同じ派遣会社に属し、同じ目標に向かうメンバーなので普通の派遣よりも仲間意識が高い場合が多いでしょう。
初心者や未経験者でも可能な仕事が多いです。
フルタイム勤務とは限りません。
派遣会社の受託業務(請負)の雇用形態
ほとんどの場合、派遣会社の契約社員になります(正社員の場合もあり)。
給料は時給制で残業代もつき、安定している場合が多いです。
社会保険も加入でき、有給もつきます。
派遣社員ではなく、契約社員なので3年以上働くことも可能です。
プロジェクト完了後、契約が終了した場合は通常の派遣社員として働く人もいます。
派遣会社の受託業務(請負)がおすすめの人
・数カ月ごとの更新ではなく、長期で安定して働きたい。
・派遣会社を利用したことがあり、派遣会社への信頼感がある。
・請負と派遣で迷っている。
・上司に相談しやすい環境で働きたい。
他にもある、こんな働き方
派遣や請負だけでなく、働き方には様々なスタイルがあります。
出向、準委任、嘱託の違いを知っておくと求人を探すときに便利ですよ。
出向
出向は務めている企業(出向元)に在籍したまま、子会社や関連会社などで業務を行う働き方です。
社外への異動や配置転換ともいえます。
出向には「在籍出向」と「転籍出向」があり、在籍出向は出向元と労働契約を結んだまま、転籍出向は出向元とは同労契約を解消し、出向先でのみ労働契約を結んだ状態です。
在籍先と労働先や指揮者が違うのは派遣と共通しています。
しかし、出向は期間が定められておらず、1年以上の長期にわたる場合が多いです。
派遣の場合は受けたくない仕事の紹介は断ることができますが、出向の場合は一種の人事異動なので社員の同意は必要ありません。
準委任
準委任契約とは主に事務処理を行う契約を指します。
請負契約と似ているので注意しましょう。
請負契約の場合は成果物と引き換えで報酬が発生しますが、準委任は何らかの作業(主に事務関係)をすることで報酬が発生します。
たとえば、請負契約の場合「営業電話で10件アポを取る」という内容だった場合、どれだけの件数、どれだけの営業電話をかけたかは関係ありません。
1時間で10件かけても、3日かけて1,000件の電話をかけても結果的に10件のアポを取ったのならば報酬は同じです。
しかし、準委任の場合は「営業電話を50件かける」というような契約をします。
取れたアポの数に関わらず、50件掛けた時点で契約が成立し、報酬が発生するのです。
もちろん、準委任契約であっても「善管注意義務」と呼ばれる「欠陥や不具合が無いように気を付ける」義務があります。
契約時に欠陥や不具合が生じた場合が最低ラインの成果を指定する場合もあるので責任を持って取り組まなければなりません。
また、請負契約の場合はいったん契約が成立すると簡単に解除はできませんが、準委任契約の場合は契約を結んだ後でもどちらからでも解除が可能です。
完成品に対して報酬が発生するのが請負、作業に対して報酬が発生するのが準委任と覚えましょう。
準委任を引き受ける会社も便宜上「請負会社」と呼ばれる場合が多いです。
ちなみに「準」のつかない「委任」とは弁護などの法律関係の依頼に使われます。
嘱託
嘱託とは正社員以外の直接雇用の働き方です。
アルバイト、パート、契約社員などをまとめた言い方になります。
雇用主と指揮者は同じです。
大半が時給制となっています。
「派遣」と「請負」の違いを正しく把握して仕事を選択しよう!
「派遣」と「請負」は、よく似ているようで実は違いが大きい働き方です。
どちらの働き方が優れているというようなことはありませんが、どちらのほうが自分にあっているかについて考えておけば、今後の仕事を選ぶ際にも役立つかもしれません。
派遣の求人情報をチェックするときも、仕事内容だけでなく、実際の働き方までイメージしてみるとよいでしょう。