目次
2024年11月 | 派遣会社 厳選3社
1. 無期転換ルールとは
派遣や契約社員などの有期労働契約を結んでいる労働者が、企業に申し込むことで無期労働契約に切り替えられるようになりました。このルールを無期転換ルールといいます。企業側は無期転換ルールの対象者となる労働者から無期労働契約への申し込みがあった場合は、断ることはできず受諾しなければなりません。申し込みがあった時点で無期労働契約が成立するのです。
無期転換ルールの対象となる有期契約労働者は一般的には派遣社員や契約社員、パートタイマーにアルバイトが考えられます。しかし、これに限らず各企業が独自に準社員やパートナー社員などと名付けている場合でも、契約期間に定めのある有期の場合は無期転換ルールの対象者となるのです。ちなみに、派遣社員の場合は派遣元の企業と有期労働契約を締結しているため、無期転換契約の申し込みは派遣元企業にすることになります。
2. 無期転換が適用される条件
有期契約労働者が企業に申し込みをすることで無期転換契約にすることができる無期転換ルールですが、適用されるには条件があります。ここでは企業に無期転換契約の申し込みが可能となる条件を紹介していきます。
有期労働契約の通算期間が5年を超えている
有期労働契約を結んでいる企業に無期転換契約の申し込みをするには、有期労働契約の通算期間が5年を超えていることが条件となります。これは同一の使用者との間で有期労働契約を結んでいなければなりません。1つの会社で有期労働者として5年間働かなければならないのです。また、同一使用者とは労働規約の締結主体を単位としているため、例えば、勤務先が異動となっても労働契約の締結主体に変更がなければ、雇用契約を継続しているとみなされます。
さらに、契約期間が5年を経過していない場合でも、例えば、3年単位で有期労働契約を更新したとします。その場合は通算契約期間が6年となるため、1度目の契約更新の段階である4年目には無期転換契約申込権利が発生することになるのです。
1回以上契約の更新が行われている
有期労働契約者が無期転換契約を申し込める条件として、1回以上の契約更新がおこなわれていなければなりません。契約が更新されていない状態では無期転換契約の申し込みの権利は発生しないのです。しかし、派遣社員の場合、労働契約期間は3年が上限となっているため、ほとんどの場合気にしなくてもこの条件はクリアできるでしょう。
現時点で同一の使用者と契約をしている
有期労働契約者が通算5年を超えて契約してきた使用者との間で、現時点でも有期労働契約を締結していることも、無期転換契約申し込みの権利発生の要件となります。また、万が一企業側が無期転換契約申込権利の発生を免れるために、何かしらの裏工作をしたとします。例えば、就業形態が変わらないにもかかわらず派遣形態や請負形態を偽造し、労働契約の締結主体を別の使用者などに切り替えた場合です。こういった場合でも、同一の使用者の要件を満たしているものとして扱われます。
3. 無契約期間はクーリングが適用される
無契約期間とは有期労働契約をしている人が同一の使用者との間で、有期労働契約を締結していない期間をいいます。この無契約期間が過去に一定以上の長さ存在するとクーリング期間として扱われてしまい、それ以前の有期労働契約期間が通算契約期間の対象から除外されてしまうのです。例えば、無契約期間の前に有期契約期間が8カ月超から10カ月以下であったとします。その場合、無契約期間が5カ月以上存在すると、この無契約期間前にあった8カ月超から10カ月以下の有期労働契約期間が、通算契約期間には含まれなくなってしまうのです。クーリング期間は無契約期間以前の有期契約期間の長さによって異なります。
4. 無期転換のメリット
ここからは有期労働契約者が期間なく働ける無期契約に転換するメリットについて紹介していきます。
安定的に働ける
有期労働契約者が無期転換することによって、安定して働くことが可能となります。例えば、働ける期間が決まっている場合は、定期的に職を探す必要があります。職探しは思いのほかエネルギーを使います。そのため、現在の仕事に集中できない期間が生まれてしまうのです。無期契約労働者になることによって、そのエネルギーを現在の仕事に向けることができ職場にとってもプラスになるのです。
長期的なキャリア形成が可能
労働契約期間がなくなることで、長期的に業務に取り組めます。そのため短期的に仕事を変える必要がなくなり、長期的なキャリア形成を図ることができるのです。例えば、専門的な技術や知識が必要な職場の場合、ある程度の経験が必要です。しかし、有期労働契約の場合はその経験を積む前に別の職場に移ることになり、キャリア形成ができません。これは、労働者にとってもマイナスですが、使用者にとってもマイナスとなります。なぜなら知識と技術を身に付けさせてもすぐに人が変わってしまい、また1から教えなければならないからです。無期転換は労働者にとっても使用者にとってもメリットがあるのです。
5. 無期転換ルールが求められる理由
さまざまな労働形態があるなかで、多くの企業で派遣社員を含む有期労働者が存在しています。そのなかの約3割が通算5年を超えて有期労働契約を更新し、その企業にとって戦力となっています。長期間にわたって有期労働者として働いている人は1年契約であったとしても、実質的に会社の事業運営に不可欠となり毎年自動的に更新を繰り返している人も少なくありません。こうした、期間の定めがない労働契約の位置づけを見直すということは自然なことであり、実態と形式を合わせる措置ともいえます。使用者と労働者にとって、適切な雇用関係を構築するために無期転換は必要となります。また、無期転換ルールによって企業は事業に精通し戦力となる人間を手放すことなく、確保し続けることができるのです。
6. 無期雇用は正社員とは限らない
無期転換ルールによって無期雇用契約を結んだとしても、正社員になることではありません。確かに正社員と派遣やアルバイトなど非正規雇用の違いの1つには雇用期間の有無があります。しかし、その他にも給料形態の違いや勤務時間の違い、さらには社会保険への加入義務が生じるかどうかという違いがあります。例えば、派遣などは時給制がほとんどなのに対し、正社員は月給制もしくは年俸制となります。勤務時間も比較的自由に選べる派遣などに対して正社員は1日8時間労働が一般的です。勤務条件などによって派遣などは社会保険に加入できない場合がほとんどですが、正社員は基本的に入ることができます。
もちろんその企業によっては、派遣やアルバイトから正社員になれるところもあります。しかし、それはその企業に正社員登用制度があるかないかの話で、今回の無期転換ルールとは別の話です。有期雇用契約から無期雇用契約になったとしても雇用期間がなくなるだけで、それ以外は有期雇用契約と何も変わらないことがほとんどなのです。したがって、無期雇用転換後も正社員と比べると、条件や待遇が低いままだということが十分あり得ますので気をつけましょう。
安定して長期のキャリアを形成しよう
無期転換のルールによって、派遣社員であっても長期にわたり同一の企業で働くことが可能となりました。長期的な教育にもつながり、キャリアの形成にも効果が見込めます。無期転換を申し込むために、まずは自分が現在就業何年目であるのか、また、無契約期間がある場合はクーリング期間に該当するのかをしっかりと確認しましょう。